日本独特の風土や文化、伝統は私にとってとても大切なことの一つだ。
それらが失われつつある寂しさを感じていたこともあり、歴史ある鷹匠の世界で躍動する女性に画家としての心が躍った。
見回すと、他にもほかにも男性中心だった伝統の世界に新風を吹き込む女性がいた。
風習や文化を柔軟な発想で支える女性画いた。
彼女たちは壁に立ち向かいながら輝いていた。
描いてみたいと思った。
ー 鷹匠 ー
鷹を山野に放って狩りを行う鷹狩の、猛禽類を扱うのが鷹匠である。
公家や武家のお抱えから、明治以降は皇室のお抱えへと受け継がれてきた。
しかし戦後、皇室行事としての鷹狩りが廃止され、衰退しつつあった。
その後、伝統行事として復活し、女性の鷹匠も登場してその颯爽とした姿が注目されるようになる。
競技や年中行事としてだけでなく、カラス対策など実際の職業として取り組む若い女性の話題などが取り上げられ、伝統に新鮮な風を吹き込んでいる。
ー杜氏ー
中世以降、様々な理由で男性中心の世界だった酒蔵。しかし、蔵の後継者不足や若者の日本酒離れなど、時代の変化の中で、近年、女性の杜氏の活躍が目に留まるようになった。
まだその数は少ないものの、柔軟な発想と新しい着眼点などで新しい日本酒の魅力を発信している女性杜氏の姿は輝いている。
2020年、英国BBC放送が選ぶ「今年の女性100人」に日本人からはただ一人、女性杜氏が選ばれた。
それも、日本酒の新しい魅力を切り拓いた「創造性」を評価されての快挙である。
また、日本酒といえば京都に小さいけれど素晴らしいお酒を作る酒蔵がある。
その「松井酒造」は若い女将が当主と二人三脚で頑張って伝統の味を守り、さらに新しい日本酒の魅力を発信し続けている。
そのような女性たちにインスピレーションを得て描いた、本人の思い入れの強い作品である。
ー ねぶた師 ー
デザインから作業まで親方的な総合力を求められるねぶた師は男性の世界とされてきた。
その厚い壁に挑む女性がいる。
「女性ならではの良さ、と括られたくない。」との姿勢、実力のみを武器に戦う姿勢は見る人に感動を与える。
ー 人形浄瑠璃 ー
女浄瑠璃など女性だけの人形浄瑠璃は各地に存在するが、国立劇場をはじめ主要な舞台では女性の遣い手はいなかった。
しかし、近年、歴史ある一座でも遣い手として活躍する女性が現れてきた。
腕力も必要な職業だが人一倍の努力で頭遣いを目指す生き方は一座の男性達にも活力を送り込んでいる。
ー 北の国の風言葉 ー
様々な歴史、神聖さと観光、民族のアイデンティティーなどの複雑な背景の中、新しい視点でアイヌの文化を見直す新しい女性たちがいる。
大自然とアイヌの伝統への深い敬意を持って、前向きに発信されるメッセージは輝いている。
ー 南の国の風言葉 ー
古典的な宮廷舞踊は男性のみのものであったが、明治以降、特に戦後は女性舞踊家が活躍するようになってきた。
自由な発想で多くの流派が個性を競い、琉球の伝統に新しい風を吹き込んでいる。
ー 白川女 ー
北白川(左京区)に住み、生花を売り歩くことを生業とした白川女。平安から続いてきて、全盛期には200人以上いた花売りだが昭和40年頃から少なくなり北白川で花を扱うのは1軒となった。それでも若い世代が頑張っている。
おばあちゃんが繋いできた伝統を次の世代へつなげたいというその瞳は輝いている。
ー 流鏑馬 ー
神聖な神事として女人禁制だった流鏑馬。
娯楽や競技としてだけでなく、神社の神事への参加を望み働きかけた先駆的な東北の女性。
彼女たちの努力により重い扉は少しずつ開かれていった。
今では各地で力強くしなやかに馬を駆る女性たちの活躍が力強い。
ー 歌留多 ー
お正月の遊び、または風雅な行事として続いてきた歌留多に、違った切り口で命を吹き込んだのが競技かるた。
特に、クィーンと呼ばれる女性優勝者は歌留多そのものの魅力をあらためて発信する力となった。
伝統の繋ぎ手とアスリートの両面を持ち合わせる存在感が美しい。